Scarsdale station area
Image

バールミツヴァとバットミツヴァ   2007年1月

バールミツバの儀式先日知り合いの息子さんのバル・ミツバに呼ばれて行ってきました。バル・ミツバというのは男の子が13才になったことを祝うユダヤ教の成人式のことです。バルはヘブライ語で息子、ミツバは戒律という意味で、この日子供たちはユダヤ教会でトーラー(モーゼ5書)の一部を朗誦し、ユダヤ社会から大人になったとして迎えられます。女の子の場合は、バット・ミツバまたはバス・ミツバと呼ばれ、(出身国による発音が少し違うだけでバス、バットはともに娘の意)12才を過ぎればいつでもよいとされていますが、男の子の場合と同様、13才の誕生日の前後の安息日に式を受けることが多いようです。


大人になるということは、日本の成人式のように公にお酒を飲んだりタバコを吸ったりすることが許されるということではありません。宗教的行事に最低限必要な10人(ミニオンと呼ばれます)の一人として参加できる年齢に達したということで、ユダヤ教の戒律を守るという宗教上の義務が課せられることを意味します。義務だけではなくこの日から子供たちは会衆の前でトーラーを読むことが出来るという栄誉を与えられるにもなります。正確には式をしなくてもユダヤ人の子供たちは13才になると宗教上では大人になりバル・ミツバになったと呼ばれますがこの日は成長の過程で記念すべき日とされていますので多くの場合は式を行い、親戚や本人の友人たちと一緒にパーティをして祝います。子供たちにとっては式そのものよりもパーテェの方が心に残るイベントとなるようです。

娘のバットミツババル、バット・ミツバは自分の時に友人を呼ぶだけでなく、友人にも呼ばれますので、スカースデールのようにユダヤ系の多い地域では中学一年から二年にかけて土曜日のほとんどを友人のバル、バット・ミツバのお祝いに参加していると言う子供も少なくありません。しょちゅう呼ばれるためにユダヤ教ではなくてもお祈りの一部を聞き覚えで暗誦してしまう子もいるほどです。日本人の子供たちが呼ばれることもあり、私も時々どうしたらよいかと相談を受けることがありますが、バル、バット・ミツバに呼ばれることはとても名誉なことだし、式はつまらないかも知れないけれどとてもおもしろい勉強になると思うのでと参加されることをおすすめしています。

式に呼ばれる子供たちは男の子は紺のブレザー、女の子はドレスというふうにいつもより少しかしこまった服装で参加します。堅苦しい式が終わるとお楽しみのパーティが待っているわけで、これは教会の大広間とかカントリークラブやレストランの宴会場などで行われます。式のあとはいったん中休みしてパーティは夜になってという所もあり、中には遊覧船を一隻借り切って行うなど、まるで結婚式かと紛うほど派手に祝う人もいます。

お祝いとしては本人の好きそうなプレゼントをさしあげたり、カードの中に貯蓄債券やチェックを入れて渡したりします。債券やチェックの場合、その額は親しさの程度や家族の方針などによってまちまちですが、普通ユダヤ教にとって縁起がよいとされている18(「ハイ」と呼びます)の倍数の、例えば、36ドル、54ドル、72ドル、90ドル、180ドルといった額が好んで使われます。(「ハイ」にこだわらず、50ドル、100ドルなどの額で渡す人ももちろんいます)お祝いをもらった子供たちはそのお金を大学の学費に使ったりするために本人名義で貯金したりすることが多いようです。

さて、今回トーラーを朗誦する知り合いの息子さんを祭壇に見ながらあらためて脳裏を横切った感慨は13才の子供たちが年々幼くみえるようになっていくと言う思いに対する驚きでした。中学2年生ですから彼らが若いのは当然ですが、我が家の息子と娘が13才でバル、バットミツバを迎えた頃は自分自身が今より若かったせいもあってその成長ぶりに感激してしまって何だか彼らがとても大きく見えたことを覚えています。(ユダヤ教の成人式,息子のバール・ミツバ))あれから10数年、今ではバル・ミツバの子供の両親までが若く見えたりして、今さらに自分の年齢を感じたものでした。

日本でも昔は元服といって15才頃から髪形や服を変えたり、童名を廃して新たな名前や位を与えると言ったことが行われていたようですが、難しい思春期を迎える子供たちに社会の一員であることをきっちりと自覚させるバル、バット・ミツバは、とても理にかなったいい伝統だと言う気がしています。

Top   ユダヤ歳時記




Image
Image
image