Scarsdale
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水晶の夜(クリスタル・ナハト)追悼記念日 人種偏見の怖さを改めて考え直そう (読売, Nov.4, 1988) 

今月(11月)9日は、クリスタルナハトと呼ばれ、ユダヤ史上忘れることの出来ない日として明記されています。今年はその日から50年目に当たります。

英語で「ザ・ナイト・オブ・ブロークン・グラス」と呼ばれるこの日、1938年11月9日は、それまでナチスによって着実に培われてきたドイツやオーストラリアの「ユダヤ人憎悪」の感情が市民運動となって一斉に吹き出した日であり、ヨーロッパのユダヤ人がホロコーストへの道をたどっていくことになったきっかけの日でもあります。

発端となったのは、11月7日の夜、ポーランド系のユダヤ青年がパリのドイツ大使館を狙撃した事件ですが、2日後に大使館員が死亡すると、待ちかまえていたようにドイツやオーストリアで一網打尽のユダヤ人の逮捕が始まり、その夜は一晩だけで2万人以上が捕らえられたと言われています。

国中の200以上のシナゴーグ(ユダヤ教会)や数え切れないほどのユダヤ人経営による銀行や商店、家屋がその夜暴動によって破壊され、この日を境にヨーロッパのユダヤ人はユダヤ人であると言うだけの理由で逮捕され、死の収容所に送られていったのです。

クリスタルナハトとは、壊れたガラスで町中が埋まってきらきらと「水晶」のようにみえた所からナチスが名付けたそうですが、この夜に続く人種偏見がもたらした想像を絶する殺戮を考えれば、これはユダヤ人だけでなく、人類全体に対してなされた許し難い冒涜として、ナショナリティを問わず、忘れてはならない日と言えるでしょう。

その日から50年目にあたるこの9日の夜はホロコーストのような過ちを人類が再び犯すことのない願いを込めて全国のシナゴーグで一晩中キャンドルや明かりがともされます。各家庭でそうする人もいます。10日は運転中もずっとヘッドライトを灯してホロコーストを忘れていないことを、これからも決して忘れないと言う意思表示をします。

9日の夜、シナゴーグやどこかのお宅で一晩中明かりがついていたり、10日の日中ヘッドライトをつけたままで運転している人がいたら、それはクリストルナハトへの鎮魂の明かりで有り、過ちを再び犯させない誓いです。

この日はユダヤ人だけでなく、すべての人が人種偏見のむなしさや恐ろしさについてあらためて考えるべき日ではないかと言う気がします。


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